はじめに
先月あたりから、FP知識のブラッシュアップを兼ねてFP3級の試験問題に取り組んでいます。
出題内容や出題傾向なども概ね分かってきましたので、記事としてまとめておきたいと思います。
私はFP協会のCFPを取得する予定がなかったこと、(3級・2級を受けずに)1級を受験したため、試験ルートとしてはきんざい一択(きんざい学科+きんざい実技)で迷う余地はなかったのですが、FP3級あるいはFP2級から勉強を始めると、ルートがいくつか存在するため結構悩ましいということが分かりました。
きんざいとFP協会の試験形式と合格ライン
FP3級の試験(学科試験と実技試験)はきんざいとFP協会の2つの試験機関が実施しています。
試験合格の実績では双方差はありませんが、出題される問題が若干異なります。
すなわち、学科試験は共通ですが、実技試験の選択肢が3つ(きんざい:2つ、FP協会:1つ)あります。
きんざい | FP協会 | |
学科試験 | 共通問題:60問 (〇✕式:30問 3択式:30問) 60点満点で36点(6割)以上が合格 |
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実技試験 | 個人資産相談業務 (大問5問 全15問) 50点満点で30点(6割)以上が合格 |
資産設計提案業務 (大問7問 全20問) 100点満点で60点以上が合格 |
保険顧客資産相談業務 (大問5問 全15問) 50点満点で30点(6割)以上が合格 |
学科試験、実技試験とも合格ラインは6割で、学科と実技の両方の試験に合格するとFP3級合格となります。
学科試験(60問)は1問当り1点の配点なので、60問中36問正解すれば、「学科試験合格」です。
実技試験の合格ラインも6割ですが、主催する試験機関で試験問題や配点が異なっています。
きんざいは、大問レベルで5問、小問レベルが15問あって満点は50点、30点以上で合格です。
15問のうち5問は1問4点、10問が1問3点の配点ですが、小問ごとの配点は公表されていません。配点内訳が示されないのは(私が受験した)FP1級の学科応用試験も同様でした。
よって、15問中9問(6割)正解しても合格できるとは限りません(10問正解すれば間違いなく合格です。)
一方、FP協会は大問レベルで7問、小問レベルが20問なので、小問1問の配点はすべて5点で100点満点となります。FP協会は(小問)20問中12問正解すると合格なので、シンプルです。
学科試験(共通)の特徴
学科試験は〇×問題が30問、3択問題が30問出題されます。
FP試験の6つの分野(①ライフプランニングと資金計画、②リスク管理、③金融資産運用、④タックスプランニング、⑤不動産、⑥相続・事業承継)から、〇×問題、3択問題がそれぞれ各5問ずつ出題されます。すなわち、6分野から均等に10問出題されることになります。
出題範囲は多岐にわたっていますが、「頻出論点」も多いので、取れる問題を確実にゲットすれば、6割とる(合格する)のはそれほど困難ではありません。ただし、かなり細かい論点からの出題もあるので、細部にこだわると時間をロスしてしまう懸念もあります。
また、将来的にFP2級以上の合格を目指す場合には、単に暗記するだけでなくしっかり理解しておいた方が良い論点もあるので、「理解と暗記のバランス」を考えて勉強する必要があると思います。
実技試験の特徴
きんざいの「個人資産相談業務」
きんざいの実技試験である「個人資産相談業務」は、FP1級、FP2級(個人資産相談業務)と最も親和性の高い試験と思われます。
試験傾向はかなり明確で、第1問が公的年金(中心は老齢基礎年金、老齢厚生年金)、第2問が金融資産運用(株価の指標やNISAなど)、第3問が会社員や自営業者の個人所得税務(給与所得と一時所得、不動産所得など、簡単な損益通算、所得控除や税額控除など)、第4問が不動産(建ぺい率、容積率、定期借地権や相続税の土地評価など)、第5問が相続・事業承継(民法の法定相続人、相続税額や贈与税額の計算、小規模宅地の特例、相続時精算課税など)が出題されます。
大問1問につき小問が3問あるので、3問のうち1問が4点、2問が3点配点と考えられます。
なお、リスク関係(生保・損保)からの出題はなく、税務(所得税・相続税・贈与税)や不動産分野の出題が多いという特徴があります。
FP1級学科試験の午後問題(学科試験応用)と出題形式や出題範囲が似ているので、FP1級を視野に入れる場合には、「個人資産相談業務」はお勧めです。
また、FP1級のきんざいの実技試験(面接試験)では、「不動産」と「相続」しか出ませんので、FP1級(きんざい実技)を目指す場合、この2分野を得意分野にしておく必要があると思います。
きんざいの「保険顧客資産相談業務」
生保や損保など保険業界で働く人、保険業界への就職(転職)を目指す方々は「保険顧客資産相談業務」の受験がお勧めです。
また、きんざいのFP2級(生保顧客資産相談業務)との親和性も高くなっています。
「保険」という文字が入っていることから、リスク管理分野からの出題が多く、大問5問中の2問がリスク管理関係です。
逆に、不動産分野からの出題はありません。
保険関係からはかなり広範な内容が問われおり、例えば、保険商品の特徴や保険の経理処理や課税上の扱いなどが問われています。
「不動産は苦手だけど保険は得意」という方は、「保険顧客資産相談業務」を選ぶと良いかもしれません。
FP協会の「資産設計提案業務」
実技試験の中で最もバランスが良いと思われるのがFP協会の実技試験です。
特に、ライフプランニングからの出題が多く、キャッシュフロー表や個人バランスシートなど、FPが最も身近に扱う可能性のある題材がテーマとなっていることから、興味を持って勉強しやすい内容と思われます。
また、問題数も(きんざい実技より)多いので、「手薄な分野が出題されて大幅に失点しまう」リスクも避けられるように思います。
例えば、きんざいの個人資産相談業務の第1問は老齢年金が出題されるケースが多いのですが、時々「遺族年金」に関する問題が出題されます。
問題数が少ないきんざいの実技試験の場合、手薄な分野が出題されると大幅失点につながってしまう恐れもあります。
この点、FP協会の実技試験は問題数がやや多いので(きんざいの15問に対してFP協会は20問)予想外の問題が出題された時の失点リスクは低くなるように思います。
なお、FP協会の実技試験では、大問に含まれる小問数は一律ではなく、例えば、最後の総合問題には5つの小問から成っています。
したがって、総合問題の出来が合否に大きく影響するように思います。
将来的に(FP協会の)AFPやCFPを目指される方、FP2級まで取得してから先のことを考えたい方は、FP協会の実技の方が向いているかもしれません。
まとめ
以上の内容をまとめると、下記のようになります。
▣ きんざい(個人資産相談業務)が向いていると思われる方
① 将来的にきんざいのFP2級 → FP1級ルートを考えている方
② 不動産や税金関係(所得税・相続税等)が苦にならない方
③ リスク関係(保険関係)がそれほど得意でない方
▣ きんざい(保険顧客資産相談業務)が向いていると思われる方
① 保険業界にお勤めの方、保険業界への就職(転職)を希望される方
② リスク関係(保険関係)が得意な方
③ 不動産関係がやや苦手な方
▣ FP協会(資産設計提案業務)が向いていると思われる方
① FP協会のAFPやCFPルートを目指す方
② ライフプラン分野の知識をすぐに生活に活用してみたい方
③ FP2級まで取得し、その後FP協会ルート(AFP→CFP)でいくか、きんざいルート(1級)でいくか検討予定の方
上記は私個人の感想なので、(どれを選ぶかに)それほどこだわる必要はないと思います。
また、FPの試験範囲は非常に広いので、得意・不得意分野があるのはむしろ自然です。
この点、学科試験・実技試験とも分野ごとの「足切り」はありませんので、得意分野で稼ぐことが可能です。
不得意分野を克服するのは大事ですが、不得意分野ばかり勉強していると、勉強のモチベーションが下がってしまいます。
不得意分野については(とりあえず最低限の内容を押さえるなど)ある程度割り切って勉強した方が、良い結果を生むと思います。
長々と書きましたが以上となります。
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