FP技能検定とは?(金財とFP協会の比較①)

FP
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前回の記事では日本FP協会が管轄するAFPやCFP®を見てきましたが、今回はもう一つの団体である一般社団法人 金融財政事情研究会を中心にFP技能検定2回に分けて見ていきたいと思います。今回が1回目です。

(なお、前回記事と併せて3回シリーズになります。)

 

歴史

一般社団法人金融財政事情研究会

一般社団法人金融財政事情研究会(以下、「金財」)は、福田赳夫(当時、大蔵官僚で後に総理大臣)が中心となって1950年に設立された大蔵省所管の社団法人です。

同年に「金融財政事情」を創刊し、その後も金融や法律関係の専門雑誌を発行していきます。

その後、1985年に金融業務関連の評価制度としての「テラー技能審査」が、1987年にはFPに関する初めての認定制度として「金融渉外技能審査」※が、それぞれ当時の労働省(現在の厚生労働省)によって技能審査として認定されます。

日本FP協会(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)の創立(1987年)もちょうどこの頃です。

2000年代に入ると、「金融渉外技能審査」※と「テラー技能審査」が廃止され、2002年に国家資格としてファイナンシャル・プランニング技能士が導入されます。

さらに同年(2002年)から日本FP協会とともに、ファイナンシャル・プランニング技能検定の指定機関となり、現在のFP技能検定の制度が確立します。

そして、「金財」は2011年に公益法人改革の流れを受けて一般社団法人に移行します。

 

※ FP技能検定の前身の「金融渉外技能審査」は「金財FP」と呼ばれ、1級から3級まであったようです。

 

株式会社きんざい

「金財」の他に、株式会社きんざい(以下、「きんざい」)があります。

書店に並んでいるFP技能検定関係の参考書などの発行元は「きんざい」の方で、他にも金融や法務関係の本を数多く出版しています。

「きんざい」は1973年に設立された法人で、「金財」からの委託事業や、金融・法務・経済・保険等の分野にわたって出版・通信教育・研修・コンサルティングなどを行っています。

 

技能検定とは何か?

FP技能検定を考察する前に、そもそも「技能検定」とは何なのか、について考察したいと思います。

厚生労働省は「技能検定」を以下のように説明しています。

技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、機械加工、建築大工やァイナンシャル・プランニングなど全部で130職種(※)の試験があります。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。
都道府県が実施する職種:111職種 / 指定試験機関が実施する職種:19職種 (厚生労働省のページより)

「技能検定制度」は、職業能力開発促進法に基づいて昭和34年度から実施されており、技能検定は、実技試験と学科試験の2区分で実施されます。

技能検定には、①等級に区分するもの(特級、1級、2級、3級、基礎1級及び基礎2級)、②等級に区分しないもの(単一等級)の2種類が存在します。

FP技能検定は、①の「等級に区分するもの」に該当します。

 

等級区分の意味

技能検定には、等級(特級、1級、2級、3級、基礎1級及び基礎2級)に区分するものがありますが、このうち「基礎1級・基礎2級」は技能実習生向け、「特級」は管理・監督者向けということになっています。

したがって、FP技能検定をはじめとして、「1級~3級」の区分になっている技能検定が多いと思われます。

技能検定の変遷

一方、必要とされる技能も時代とともに変化していくので、技能検定も創設や廃止があります。

先の歴史で見たように、「FP技能検定」も2002年に「金融渉外技能審査」が発展的に解消する形で認定制度となりました。

また、「ウェブデザイン」(2007年創設)、「キャリアコンサルティング」(2008年創設)のように時代のニーズに合わせて新たに創設された技能検定もあります。

他方、工場や駅舎の屋根などに使われるスレート板の施工に関する「スレート施工技能士」などは、2009年に廃止されています。

時代の要請に応じて、技能検定も適宜見直しが行われているようです。

 

FP技能検定の受検資格

ようやく本題のFP技能検定の話に移ります。

先の「金財」の歴史でも触れたとおり、FP技能検定の実施機関は、日本FP協会一般社団法人 金融財政事情研究会会(金財)の2つがあります。

技能検定に関しては、「金財」の方が馴染み深いので、以下「金財」を中心に見ていきます。

金財によるとFP技能検定の1級から3級の受検資格は、以下のように規定されています。

等級 試験区分 受検資格(いずれかを満たせばよい)
1級 学科試験 ・2級技能検定合格者で、FP業務に関し1年以上の実務経験を有する者
・FP業務に関し5年以上の実務経験を有する者
・厚生労働省認定金融渉外技能審査2級の合格者で、1年以上の実務経験を有する者
実技試験 ・1級学科試験の合格者
・「FP養成コース」修了者でFP業務に関し1年以上の実務経験を有する者
・日本FP協会のCFP認定者
・日本FP協会のCFP資格審査試験の合格者
2級 学科試験
実技試験
・3級技能検定の合格者
・FP業務に関し2年以上の実務経験を有する者
・日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者
・厚生労働省認定金融渉外技能審査3級の合格者
3級 学科試験・実技試験 ・FP業務に従事している者または従事しようとしている者

上の表の2級と1級の受験資格にある「金融渉外技能審査」は、前述したとおり2002年に廃止された(FP技能資格の前身ともいえる)技能検定です。

既に廃止されて20年近く経過しているため、この資格で受験する方が現在どの位おられるかわかりませんが、当面は(旧試験である)「金融渉外技能審査」の合格者にも受験資格を認めるという一種の経過措置がとられています。

 

3級の受検資格

FP3級については受験資格はありませんので、FPに興味があれば誰でも受検することができます。

 

2級の受検資格

FP2級を受検資格を一見して気付くのは、受検資格が細かく規定されているということです。

実務経験の有無によって区分すると以下のようになります

実務経験なし 実務経験あり
① 3級技能検定の合格者
② 日本FP協会が認定するAFP認定研修を修了した者
・FP業務に関し2年以上の実務経験を有する者

2002年に廃止された「金融渉外技能審査」による受験資格は割愛しています。

 

実務経験がない場合の2級受験

2級については実務経験要件(FP業務2年以上)を満たせば直接受験できますが、実務経験がない場合には、「3級合格」または日本FP協会の「AFP認定研修」(基本課程)を受けて受検要件を満たす必要があります。

AFP認定研修は前回の記事で詳しく取り上げましたが、実務経験等によって、①基本課程(実務経験なし)、②3級課程(FP3級合格者)、③技能士課程(FP2級合格者)、④税理士課程(税理士または公認会計士の登録者)に区分されている研修です。

ということで、3級合格等を経由すれば2級は実務経験がなくても受検(合格)できることになります。

 

1級の受験資格

1級の受験資格はかなり複雑です。学科試験と実技試験の受験資格が異なっている点が少々厄介です。

ということで、受験資格を整理したいと思います。

 

学科試験の受験資格

学科試験の受験資格を見ると(旧「金融渉外技能審査」による受検資格を除くと)、次の2つが受検資格になります。

① 2級合格+FP業務経験1年以上
② FP業務経験5年以上

「1級学科試験を受けるには実務経験が必要」なので、「1級取得するには実務経験がないとダメ」と思われがちですが、実は実務経験がなくても1級を取得できる道はあります。

それは実技試験の受験資格を見ることで見えてきます。

 

実技試験の受検要件

実技試験の受検要件には4つあります。

① 1級学科試験の合格者
② 「FP養成コース」修了者でFP業務に関し1年以上の実務経験を有する者
③ 日本FP協会のCFP認定者
④ 日本FP協会のCFP資格審査試験の合格者

①は学科の受験要件に実務経験があったので実務経験は必須です。

また、②は「職業能力開発促進法」に基づく認定職業訓練の1コースとして実施されるもので、金融機関等でFP実務に携わる方たち向けの全日制(40日間)のコースとなります。こちらのコース受講も実務経験が必要と思われます。なお、受講料が100万円ほどかかるので、現実的には企業派遣になるでしょう。

ここで注目すべきは④の要件です。

 

実務経験なしでFP1級合格可能?

④の「CFP資格審査試験」とは、CFPの学科試験6科目(①金融資産運用設計 ②不動産運用設計 ③ライフプランニング・リタイアメントプランニング ④リスクと保険 ⑤タックスプランニング ⑥相続・事業承継設計)を意味します。この試験に合格した人は、FP1級の実技試験の受検資格があることになります

ここで、前回の復習になりますが、CFP®については学科試験の受験資格としてAFP認定者が挙げられていました。

基本的に「FP2級+AFP認定研修 ⇒ AFP」(FP2級は実務経験不要で取得可能)なので、実務経験が全くなくてもCFPの学科試験を受けることができます

ということで、例えば以下のようなルートを経由すれば、(規定上は※)FP1級を実務経験なしに取得できることになります。

ルート1:FP3級合格 ⇒ FP2級合格 ⇒ AFP認定研修(技能士コース)⇒(AFP認定)⇒CFP学科試験合格 ⇒ FP1級実技試検合格 ⇒FP1級合格
ルート2:AFP認定研修(基本課程)⇒ FP2級合格 ⇒(AFP認定)⇒CFP学科試験合格 ⇒ FP1級実技試検合格 ⇒FP1級合格

※ あくまで規定の文言上の話なので、実際に可能かどうかについては所管機関への照会をお願いいたします。

 

FP技能検定の2つの性格

少しマニアックな話になってしまいましたが、色々調べていて思ったことは、「技能検定試験には2つのの性格があるのではないか」ということです。

1番目は等級区分(3級,2級,1級)を利用して、3級→2級→1級と段階的に技能を高めていくという性格です。

利用者(受検者)は、検定試験を利用して特定分野の技能向上を図ることができます。

 

2番目は、その時点における「個人の技能習得レベルを評価する」という性格です。

2級は3級を経由することなく、1級は2級を経由することなく受検することができるという点にも顕著に現れています。

つまり、それぞれの級が独立しているわけです。

 

FP技能検定の2番目の性格が、日本FP協会のCFP®制度(AFP ⇒ CFP®という流れ)との大きな違いと言えると思います。

ポイント

  • FP技能検定スタートは2002年で、認定団体は「金財」と「日本FP協会」の2つ。
  • FP技能検定の前身は「金融渉外技能審査」(金財FP)。
  • 「技能検定」は技能習得レベルを評価する国家検定制度で、所定の級に合格すると「技能士」を名乗れる。
  • FP技能検定の受験資格は細かく規定されているが、実務経験がなくても受検できる道はある。
  • FP技能検定は1級~3級まで独立しており、CFP®とは基本的性格が異なる。

ここまでで約4,600字になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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