社労士試験の勉強をする場合、(特に、私のような)初学者の場合は、順番通り(1科目目の)労働基準法から勉強していくことが多いと思います。
個々の概念や用語は勉強した時には理解できます(否、理解したつもりにはなれます)。
また、2科目である労働安全衛生法、3科目である労働者災害補償保険法と進んでいくと、科目間のつながりが理解できるようになる場合もあったり、あるいは、逆に混乱してくる場合があります。
「この前、勉強したことと何か違う」とか「似たような規定がいくつもあって混乱してきた」」いうことが良くあります。
以下のような問題の正誤判定を通じて、私が混乱していた点を少し整理してみました。
[st-mybox title=”” fontawesome=”” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#f3f3f3″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]【平成29年 労働基準法】
労働基準法第26条に定める休業手当は、同条に係る休業期間中において、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、支給する義務は生じない。[/st-mybox]
答え ⇒ 「正しい」
休日については、「休業手当」を支給する義務はありません。
もう一題。
[st-mybox title=”” fontawesome=”” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#f3f3f3″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]【平成30年 労働者災害補償保険法】
会社の所定休日においては、労働契約上賃金請求権が生じないので、業務上の傷病による療養中であっても、当該所定休日分の休業補償給付は支給されない。[/st-mybox]
答え ⇒ 「誤り」
休業補償給付は、休日や出勤停止期間中など賃金請求権のない日についても支給されます。
休業手当 ⇒ 休日に支給されない 休業補償 ⇒ 休日に支給される |
これさえ知っていれば、上の問題は解けるのですが…
少し内容を深めてみます。
[st-kaiwa1]休業手当は休日不支給、休業補償は休日支給。そして、休業手当は「賃金」に該当するけど、休業補償は「賃金」に該当しない…と。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]その通り。他には?[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]休業手当は「課税」されるけど、休業補償は「非課税」だ。あとは、休業補償には、待期期間とかあったね。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]待期期間中(3日間)は、会社が補償するんだよね。[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]あれ? 会社が払うのが「休業手当」、労災で払ってもらえるのが「休業補償」って漠然と理解していたけど、なんか違うね。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]確かに、ちょっと調べてみた方が良いね。[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]休業手当は、会社に帰責事由があることが条件だね。労働者には働く用意や意思があるのに、使用者の都合で(拒否されて)働けずに賃金がもらえない時に、平均賃金の60%以上の手当を支給する。労働基準法第26条に規定されているね。「ノーワーク・ノーペイの原則」の例外だ。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]なるほど。会社の帰責事由はかなり広範囲に及ぶけれど、帰責事由がなければ、会社は休業手当は払う必要はないということだね。では、改めて休業補償の方は?[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]休業補償は、労働者が業務や通勤による傷病で働けなくなって賃金がもらえない時に支給される。休業補償は、労働基準法第76条や労災法の14条などに規定されているね。こちらも平均賃金の60%だけど、休業特別支給金の20%を加えて80%になる。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]業務災害の場合が「休業補償給付」、通勤災害の場合は「休業給付」だったね。待期期間中の扱いは?[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]業務災害の場合は、待期期間中(3日間)の休業補償は使用者が行う。でも、通勤災害の場合は、休業給付を使用者が行う義務はない。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]通勤災害の場合、待機期間中になぜ使用者は補償義務を負わないの?[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]通勤災害は使用者に帰責事由がないから…いや、違うな。使用者の帰責事由がない業務災害も使用者に補償義務があるから。そうか! そもそも、労働基準法は業務災害の話であって、通勤災害とかは(労基法の)守備範囲外だった。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]労基法76条では、「労働者が業務上の負傷や疾病で働けなくなったとき」に使用者の責任として休業補償を行う旨が規定されているね。使用者の帰責事由は関係ないんだよね。使用者の帰責事由の有無に関係なく、労働者が業務上の傷病で働けなくなった場合が76条、そして具体的には労災法の給付(4日目から)で労働者保護を図ると同時に使用者の負担を軽減するわけだ。労基法76条(休業補償)は労働者を主役にして考えないと休業手当と混乱するね。[/st-kaiwa3]
[st-kaiwa1]労災法の方では、業務災害だけでなく、通勤災害、そして複数業務要因災害まで守備範囲を拡大して労働者保護を図っている。さらに、労災法に規定する要因以外の傷病については、健康保険法の傷病手当金でカバーする。かなり手厚いんだね。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa3 r]色々な規定がつながっているね。そう言えば、打切り補償もあったか。まぁ、一度に理解するのは難しいから徐々に深めていこう[/st-kaiwa3]
…こんな感じで、「少しずつ理解を深めていく」のが必要なのでしょうね。
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