診断士2次試験の結果分析

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2次試験の結果分析にあたって

2022年の中小企業診断士2次試験を受験された皆様、大変お疲れ様でした。

試験である以上、合格を勝ち取った方もいれば、惜しくも涙を飲んだ方もおられます。

1次試験が足切りギリギリ(経営情報:40点、中小経営:42点)、2次試験(合計点)も240点ギリギリという私のような人間から見ると、「合格か否かは紙一重」という現実を痛感します。

ギリギリ合格の私なので、「こうすれば合格できる」というようなお話はできません。

また、受験予備校や通信教育も利用しておらず、(市販)教材も最低限度しか利用していない(1次試験:5冊で13,000円弱、2次試験:6冊で20,000円弱)ことから、勉強方法等に関する話題も大して持ち合わせていません。

しかし、今回の試験より2次試験の得点が受験者全員に開示されるようになったことから、開示得点データに基づいて、私自身が比較的得意とする数値(統計)分析で多少お役に立てる情報を提供できればと思い、この記事を書くことにしました。

来年以降、診断士2次筆記試験を受けられる方のお役に立てれば幸いです。

 

2022年2次筆記試験の統計数値

2023年2月6日現在、Twitterで報告があった218名の方の2次得点を集計したところ、結果は以下の通りとなりました。

集計したサンプルは、全受験者の約2.5%、全合格者の約6.8%に相当します。

なお、目視による集計のため、集計から漏れている得点もあることを申し添えます。

 

事例Ⅳと事例1は偏差(バラつき)が大きい

一目見て気づくことは、(未合格者、合格者ともに)事例Ⅰと事例Ⅳの標準偏差が大きいという点です。

事例Ⅳは財務(計算)の事例なので、点差がつくことは予想できましたが、事例Ⅰ~事例Ⅲは記述型の事例でなので、点数のバラツキは「似通ってくるのでは?」と推測されます。

しかし、(統計数値を見る限り)今回の事例Ⅰの点数のバラツキは、事例Ⅱや事例Ⅲとは明らかに異なります。

また、40点未満による未合格者は、事例Ⅰ:15人、事例Ⅱ:1人、事例Ⅲ:2人、事例Ⅳ:11人と、事例Ⅰで最も多くなっていることも特徴的です。

 

合格者は、事例ⅠとⅣの高得点(70点以上)比率が高い

合格者と未合格者を比較すると、70点以上の比率について合格者の方が高くなっていますが、事例Ⅰと事例Ⅳにおいてその傾向が顕著に表れています。

特に、事例Ⅳについては合格者の4割が70点以上を取得しており、事例Ⅳの得点が合格の大きな要因になっていると考えられます。

 

220点以上239点以下の未合格者の比率が高い

未合格者(108人)のうち、220点以上239点以下の方が68名(比率で約63%)に上っていることも注目に値します。

もちろん、Twitterへ得点をアップされた方々は、相当勉強を積み重ねて来られた方々と推測されます。よって、集計されたサンプルは未合格者全体の母集団(約7,000人)を代表するとは言えないとは思います。

しかしながら、(220点~239点という)合格ライン近辺におられる方が相当数存在することはほぼ間違いないと考えられます。

 

240点以上259点以下の合格者の比率が高い

合格者(110人)のうち、240点以上259点以下の方が69名(約63%)に上るということも特筆に値します。

未合格者の6割超が220点から239点の得点レンジに、そして合格者の6割超が240点~259点の得点レンジにあることから、220点~259点の得点レンジに相当数の受験者がひしめいていると推測できます。

なお、未合格者と合格者の得点レンジ別の人数は以下のグラフの通りです。

 

合否を分ける要因とは

合格者(110人)と未合格者のデータを比較することで合否を分ける要因の分析を行いました。

なお、未合格者のデータとしては、合格ラインにかなり近いと考えられる「220点以上239点以下の未合格者のデータ」(68人)を抽出し、比較対象としました。

なお、240点以上の未合格者の方(3人)は、1事例が40点未満であることが明らか(=不合格原因が明らか)なので、分析対象から外しています。なお、上記68人の中には、40点未満の方も含まれています。

 

中央値の比較

(a)合格者、(b)未合格者、(c)220点以上239点以下の未合格者の中央値を比較したものが以下の表です。

上記の表から、以下の傾向が読み取れます。

  • 事例Ⅰと事例Ⅳの中央値の差が6.5点~11.5点と大きく、事例Ⅱ、事例Ⅲの中央値の差は4点~5点と比較的小さい。

  • 合格者と未合格者②(220点~239点)の中央値の差を比較すると、事例Ⅳで9点、事例Ⅱと事例Ⅲの合計で8点(=4点+4点)と、事例Ⅳの方がかなり大きい

 

合格者の属性分析

合格者(110人)の属性は以下の通りとなります。

上記の表の合格者の属性から、以下の事項が判明します。

  • 40点台の事例のある合格者の比率は12.7%、うち、44点以下の事例のある合格者の比率は3.6%と低い。40点台の得点を避けることが不合格にならないポイントと考えられる。

  • 54点以下の事例が2以上ある合格者の比率は3.6%と低い。50点台前半の事例は1つに留めることがポイントと考えられる。

  • 40点台の事例がある合格者、54点以下の事例が2事例ある合格者は17人いるが、17人全員が70点以上得点した事例がある。つまり、上記2つのディスアドバンテージを挽回するために、70点以上の事例が必要と考えられる。

  • 70点以上の事例がある合格者の比率は69.1%とかなり高いが、80点以上は20%であり、それほど高くはない。70点台の事例が1つ以上あると、合格に有利に働くと考えられる。

  • 全事例60点以上のバランス型合格者の比率は16.4%と比較的少ない

  • (64点、56点、58点、66点)のような、70点以上の事例がなく、60点台の事例が2であるバランス型の合格者の比率は、9.1%と比較的少数派である。

 

未合格者の属性分析

220点以上239点以下の未合格者(68人)の属性は以下の通りです。

 

上記の表の未合格者(220点~239点)の属性から、以下の事項が判明します。

  • 49点以下の事例がある未合格者は55.9%と過半数を占めており、合格者の場合の同比率(12.7%)を大きく上回る。49点以下の事例がないことが重要と考えられる。

  • 54点以下の事例が2以上ある未合格者の比率は38.2%であり、合格者の場合の同比率(3.6%)を大きく上回る。54点以下の事例が2つあると、合格が厳しくなると予想される。

  • 上記2つのディスアドバンテージを有する未合格者は46人(67.6%)であり未合格者の3分の2を超えている。このディスアドバンテージを挽回する70点以上の事例を有する未合格者は(46人中)16人と35%弱にとどまっている。

  • 上記70点以上の事例を有する未合格者(16人)が挽回できない理由は、①40点未満の足切り、②2事例が40点台等といった理由で1事例が70点以上では挽回できない、③挽回はできたが(3科目平均で60点をクリアしたが)、4事例目で惜しくも60点未満のため合格点に未達、といった理由である。

  • (62点、54点、51点、63点)のような、70点以上の事例がなく、60点台の事例が2であるバランス型の未合格者は26人(36.8%)と3分の1を超えており、合格者の同比率(9.1%)を上回っている。60点台が2事例の場合、合格点に達するのは意外に難しいと考えられる

  • よって、①60点台が3事例、②60点以上の2事例のうち1つは70点以上とることが、合格確率を上げるうえでは有効と考えられる。

 

まとめ

上記の分析結果の考察から、合格のためには以下のような点に留意する必要があると考えられます。

  1. 50点未満の事例を作らない

  2. 50点台の事例が2つある場合、少なくともどちらかの事例で55点以上とる必要がある(220点~239点の未合格者の中央値が目安となる)。

  3. 上記1と2の条件を満たせば、残り科目での挽回可能性が高まる。

  4. 70点以上とれる得意事例が1つあると合格可能性が高まる。

  5. 全事例60点以上の合格者は少数派(約16%)なので、上記1~4の組合せで合格点突破を狙うのが現実的かもしれない。

  6. 80点以上とれる事例があればかなり有利だが、合格者の中でも80点以上取得者は比較的少数派(20%)である。

  7. 4事例の得点バランス(例えば、事例Ⅰ:60点台、事例Ⅱ:50点台後半、事例Ⅲ:60点台、事例Ⅳ:60点台後半~70点台)を意識することが望ましいと考えられる。

  8. 今回は事例Ⅰと事例Ⅳで差がついたが、来年以降は不明。しかし、事例Ⅳで差がつく傾向は変わらないと思われる。得点見込がある程度立てやすい事例Ⅳを得意(少なくとも不得意でない程度)にしておくことが望ましい。

 

以上となります。

繰返しになりますが、合否は紙一重と思います。

来年受験される方々の合格を祈念いたします。

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